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静岡県・財政再建は大丈夫か?

●2002年 白鳥良香

  静岡県2002年度予算の問題点

 昨年暮れ、新聞各紙は、景気の悪化の影響で県税収入の落ち込みが激しく静岡県の
本年度予算計上額の確保は困難で、さらに来年度の財源不足は800億円に上ると報
じている。いよいよの財政悪化に、さすがのゼネコン知事石川も大型土木工事にブレー
キをかけざるを得なくなるだろうと予測した県民も多かった。
 ところが、年が明け、2月・3月の県議会に提案された2002年度予算案をみて驚いた。
変革時代の課題に挑戦する攻めの予算」とキャッチフレーズがつけられ、空港をはじ
めとする大型プロジェクトは予定どうり実施する。財政健全化計画の達成も問題なく、新
年度の財源不足は解消され、財政健全化債(資金繰り借金)の発行も三年連続回避さ
れた。さらに地震対策や雇用拡充等へ財源を重点配分し、県民本位の戦略型予算が編
成できたと発表されたのである。
 「危機だ、破産だ、と騒がれてきたが、静岡県の広報の説明の通り、静岡県財政は健
全で心配ないんだ、空港を作っても県財政には影響ないんだ」と受け取った県民も少な
くないと思われる。
 このままでは真剣に石川知事の財政運営を『亡国の政治』と批判してきた人々が「狼
少年」にされかねない。石川知事がどんなマジックを使ったのか、そのだましのテクニッ
クを解明することで、「攻めの予算」の本当の姿を裸にしてみよう。

(単位:億円・%)
01年度当初 02年度当初 増減 伸率
一般会計予算規模 13215 11920 △1295 △9,8
県税収入 4780 4210 △570 △11.9
地方交付税 1865 2115 250 13.4
基金取崩額 482 531 49 10.2
県債 1591 1309 △282 △17.8
県債残高 19761 19603 △158


1.財政悪化は無かったのか
 前ページ下段の表は、02年度予算収入の主なものの前年度との比較である。予算規
模の1兆1920億円は1995年来最低の規模であり、一番の基本収入である県税収入
額4210億円は1988年来の最低額である。
 こうした中でも県債が2兆円を超えないよう努力の結果、158億円も県債を減らしたと
自慢げに報告しているが、一般会計だけで1兆9600億円もの借金残高を抱えている厳
しい現実には何の変化もないと言えよう。
 さらに昨年に引き続き、地震対策備蓄に絶対必要な基金の食いつぶしは相変わらずで、
なけなしの最後の貯金にも手を付け、次年度以降に活用できる財政5基金高はわずか1
71億円になってしまうと発表されている。
 県民が県財政をみるとき、もっとも気にかかる借金の返済額は新年度予算では
 公債費(借入金元利返済金) 
 2001当初 1803.15億円…県税比37.7%
 2002当初 1690.39億円…県税比40.2%
 前年比 △ 112.76億円

 上記の数字になっていて、努力の結果、公債費も112億円余も減額できたように見え
るが、これは経理方法の変更によるトリックで、新年度から借金返済のための借金、い
わゆる「借換債」を一般会計から外して特別会計に移した結果の減額である。2001年
を同様にすれば、1610億円の公債費額になり、県税比は33.7%%となる。上記の表
を正しく書き産すと次のようになる。
 公債費(借入金元利返済金) 
 2001当初 1610億円…県税比 33.7%
 2002当初 1690億円…県税比 40.2%
 県民の納める税金に占める返済額の割合は、6.5ポイントも上昇し、ついに40%を突
破してしまっている。私たちの予告どうり県民の稼ぎの50%が借金返済に消えていく日
はそう遠くないだろう。

2.財政健全化計画前倒し達成の真贋

■02年度静岡県予算概要http://www.pref.shizuoka.jp/soumu/yosan/H14/index.htm
http://www.adobe.co.jp/products/acrobat/readstep2.html(アクロバットリーダー5.0)


 別表の1.2をみてほしい、1表が2001年度発表の財政健全化5カ年計画、2表が今
回発表の新財政健全化計画で、経済成長率を2.5%、交付税も経済成長率に連動で
試算してある。(自信がもてないため、経済成長率を0%にしたケースを含め、5種類の
推計をしているがここでは静岡県が願望しているケース1取り上げる)。ここで、出発点
になっている2001年度の当初予算と、2001年と2002年に発表した財政健全化計
画での2005年度の予測計画数値の比較をしてみよう。

05計画数値 出発点の01当初予算 01年度健全化計画別表1 02年度健全化計画別表2

義務的経費 6668億円 7920億円 6597億円
人件費 4145億円 4264億円 4143億円
扶助費 617億円 804億円 697億円
公債費 1803億円 2749億円 1651億円
・通常分(別掲) 1610億円 1610億円 1651億円
・借換分(別掲) 193億円 1139億円
投資的経費 3192億円 2945億円 2604億円
公共・直轄 1635億円 1646億円 1422億円
単独 1557億円 1299億円 1182億円
その他経費 3355億円 3311億円 2662億円
歳出合計A 13215億円 14176億円 11863億円

県税 4780億円 4978億円 4515億円
地方交付税 2025億円 2420億円 2800億円
国庫支出金 2130億円 2193億円 2057億円
県債 1431億円 2223億円 886億円
新発行債 1238億円 1084億円 886億円
借換債 193億円 1139億円
その他の歳入 2367億円 2382億円 1658億円
歳入合計B 12733億円 14196億円 11916億円
財源不足額
B−A
△482億円 +20億円 +53億円
経営収支比率 90.0% 82.9% 83.9%
県債残高 19326億円 19221億円 18794億円
臨時財政
対策費を含む
19849億円 20021億円 19729億円

 財政悪化がより範在化した今年度の5ヵ年計画が、昨年度策定の5ヵ年計画以上に更
に健全化が進み、石川知事が豪語するように「静岡県の財政には何の問題もない、空港
建設は負担にはならない」数字になっている。
 ★2005年度(H17)には、今年度482億円の赤字も、53億円の黒字に転じる。
 ★経常収支比率は6.9ポイントも改薯される。
 ★県債残高も2兆円を下回った。
 と財政健全化の成果が誇示されているが、はたしてそうだろうか、この作文のような「5ヵ
年計画」で静岡県財政の危機、静岡県民の不幸が回避できるものでないことを箇条書き
にしてみよう。
(歳入の問題点)

1. 2.5%の経済成長率を根拠にした4年後の県税収入を4515億円見込んでいるが、
 成長率を0%にした推計では4223億円となり、約300億円の減収となる。
2. 国が地方交付税の削減を方針化している現実を無視して出発点の01年度より77
 5億円も増額の2800億円を見込んでいる。
3. 県債発行額(借入金)は前年度健全化計画の2223億円から一挙に886億円に減
っているように見えるが、前節で説明したように、借金返済のための借換え借金を別会計
にしただけの話で、それを戻せばそう増減はない。
 以上の問題点から、大胆な予測をすれば、最悪の場合、2005年度には1000億円以
上の歳入欠損もあり得るだろう。


(歳出の問題点)

1. 義務的経費の大幅減は、借換分の返済額(公債費)を特別会計に移しただけで、実
 態には変化無し。
2 投資的経費は、01年当初に比ベ588億円の減額、01年5ヵ年計画に比べても34
1億円の滅である。ここでの問題点は、投資的経費のうち空港などのプロジェクト事業は
計画どうりほぼ満額の予算が付いているので、減額分はすべて県民生活関連事業にか
ぶせられていることになる。
 全国最下位クラスの民生、福祉、教育などの事業費も実態は10%以上の減額、県道、
市町村道、小河川、下水などの整備、改良など県民生活に欠かせないが土木事業も減
額分は15%台である。これが石川知事がほこらしげに県議会に提案した事業数2200を
1500に削減したという中身である。生活関連の県事業を受け持っ県内各地に置かれた
10土木事務所の事業費は99年以来10%づつ減額され続け、下田、袋井など斉藤知事
時代の半分にまで予算が縮小されている現実については、水野編著『静岡県は大丈夫か』
にくわしいので参照していただきたい。


(結論)
 「財政健全化計画」などと名付けるのも恥ずかしい代物で、歳入は水増し推計、歳出は
生活関連事業、予算の機械的な切り捨て、それでも足りない部分は借換え借金でつじつ
ま合わせ、しかも借換は特別会計に移して、借金総額を小さく見せる。
 こんな予算を「変革時代の課題に挑戦する攻めの予算」などと呼ばせておく静岡県民は、
「日本一、世界一のお人良し」ではなかろうか。

3.02年度予算の個別問題点

(具体例を調査中であるが、年度初めで正確な数字がつかめないので、整理のまま、問題
点を羅列しておき、レポートし直す。)


1.財政危機などどこ吹く風、満額近いプロジェクト事業

01当初 02当初
静岡空港 166億9400万円 155億6500万円
第2東名関連 52億2500万円 65億9700万円


2.相変わらずのイベント偏重

01当初 02当初
国際園芸博 51億2700万円 75億0200万円
ワールドサッカー 8億9000万円 12億5200万円


3.与党にも不評、それでも私はやるー知事

01当初 02当初
グランシップ関連 20億3300万円 18億9523万円
防災船希望運航費 1億1400万円 1億1000万円


4.大地震には間に合わない地震対策(調査中)
5.福祉の現場は泣いている(具体例調査中)
6.見せかけだけの雇用創出(検討中)
7.見せかけもない教育予算(検討中)

「静岡県の借金の半分は国が返してくれる」は本当か

 空港建設を筆頭とする大型公共事業の乱発で、静岡県の財政に赤信号が灯り、県債
(借金)残高は2兆円に達し、年々の公債費(借金元利返済額)が県民の納める税金の
40%を超えてしまった事は紛れもない事実である。
 石川知事のこうした県政運営に県民の批判は高まり、その中心に空港反対運動が位
置している。県民と空港反対運動を切り離し、反対世論を沈静化させ、あくまで空港建
設を推し進めるための「切り札」として静岡県がもちだしてきた戦術の環が、「借金は心
配ない、半分は国が返してくれる、県財政には空港建設の余力は十二分にある」論で、
可能なかぎりの機会と宣伝手段を総動員して県民の洗脳に力を注いでいる。
 この問題を考える時、事の本質である@県債残高膨張の原因と経緯、A自治体が国
の借金を肩代わさせられている問題、B地方交付税の仕組み、の検討・理解を抜きにし
て、数字の正否問題に引き込まれたら県の思う壷である。
 なぜなら、前後、左右の経緯を無視して数字だけ取り出せば「50%は国が負担する」
と言ってもその限りでは間違いではないからである。だからこそそのように取り上げさせ
ることに県は狙いを絞ったのである。
 ここでは、まず静岡県の主張から検討してみよう。


1.国の半額負担の根拠

 国は法律で、自治体の各種事業に対して一定の割合で負担する事が義務付けされて
いる。例えば県管理河川の改修事業費10億円について国の負担割合が50%だとす
ると、5億円負担することになる。ところが国には金がないのでぽんと5億円を支払えな
い。そこで10億円の事業費を県債発行で賄わさせ、5億円分を毎年の地方交付税の計
算に組み込んで分割負担することになる。最近ではその年度に一括して交付しなけれ
ばならない負担金まで金がなくて支払えず、「臨時財源対策債」として県に借金させ、返
済は借入額の100%を分割で国が支払うケースも増えてきている。
 それらもろもろの肩代わり借金返済について、01年度も、02年度も、その年度の静
岡県の借金返済額(公債費)の約50%が国の返す分となり、地方交付税で措置されて
いる、だから借金の半分は国が返してくれるという理屈になる。回りくどくて恐縮だがざ
っとこういう仕組みである。
 付表1は01年度の静岡県の公債費交付税負担調べである。これをまとめると、

01年度返済該当県債残高総額  1兆9486億円
  内国返済分県債残高総額      9836億円
  国負担割合                 50.5%
  内臨時財瀕対策債           6056億円
  国負担額中の財瀕対策債の割合   61.6%


 となる。何のことはない、国は県に肩代わりさせていた借金の当然負担すべき返済金
を交付税という形で吐きだしただけの話であり、しかもその62%は国の借金をまるまる
県に名義貸してもらった借金分であった。
 景気回復の大義名分のもと、こんな不正常なやりくりまでして県に大型公共工事を押
しつけ、また静岡県も自治省天下り知事のもと、易々として、率先して借金を引き受け
プロジェクト事業に邁進してきた。県民の目から隠してきたこのような異常な構造が、
「借金は国が半分返してくれる」と言い訳を持ち出したために県民の前に白日の下にさ
らされる結果になってしまったのである。こうした構造は今まで県議会にも説明されて
こなかったものである。薮をつついて蛇を出してしまったと言えよう。

2.地方交付税の仕組みと公債費

 国民のため事業の30%しか受け持たない国が、税金の60%を受け取る税制によっ
て中央集権制度は支えられているが、国はその税金の一部を地方自治体に還元す
ることで自治体コントロールを計っている。それが地方交付税であり、国庸支出金であ
る。口では地方分権とか地方主権といいながら、地方自治体に税財瀕を配分し直さな
いのは中央管理の旨味を手放したくないからである。
 国税の地方自治体配分の主な仕組みが地方交付税で、表向きは全国の行政水準
を平準化する目的で交付額を決めるため、財政力の豊かな自治体は不交付団体とな
る。その計算は実に複雑かつ不規則で、額の決定は国側の一方的査定によるもので
あり、自治体側があらかじめ正確に予定することは難しい。
 国の政策に協力した度合いによる「政治的査定」のあることも公然の秘密である。
 その年度の地方交付税には積算根拠の明細書がついている訳ではないので県債返
済額分も全額計算されていますよとの説明を信じるしかないことになる。本来交付税
は使途の限定されない一般財源として収入されるものなので県債返済に使おうが、福
祉事業に使おうが、使い方は自治体の宰領によるものである。
 以下続く・・・・・
●一般会計
公債費交付税区分別現在高調べ(単位:億円)

区分 13年度当初予算
算入率 残高 算入額
土木関連 0.2000〜0.5000 6359 2082
農林水産業関連 0.3000〜0.4910 253 106
災害関連 0.4750〜0.9500 370 303
地域総合整備 0.4910 1840 903
財源対策債 0.2000〜1.0000 7216 6056
その他 0.5000〜1.0000 613 386
交付税該当計 16651 9836
交付税不該当 2835
合計 19486 9836
交付税算入率 85.5% 50.5%

*当初予算時の残高見込である。