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公開書簡
                                           2003年5月13日
静岡県事業評価監視委員会委員各位

                               空港はいらない静岡県民の会
                               共同代表  佐野慶子   島野房巳
                                       鈴木卓馬   竹野 昇
                                       吉本健一

 静岡空港整備事業の再評価に関する貴委員会の調査審議について、意見及び要望を
申し上げます。

1.「御用審議会」 「隠れ蓑委員会」に堕す危険について

    

 貴委員会の調査審議の開始にあたり、当会は知事に対し、各委員の専門分野、同じく
公共事業に関する研究等の実績、静岡空港に関する評価基準等を照会しました(資料1)
これは、貴委員会の従来の事業評価監視について私たちは十分信を措くことができず、
今回の貴委員会の調査手法も同じ轍を踏むことを惧れるからにほかなりません。
 果たせるかな、私たちが第1回会議を傍聴しただけでも、静岡空港の建設問題に関す
る委員の方々の御知識は、甚だ失礼ながら、これから公正にして厳密な検証を可能とす
るには違いものと感じざるを得ませんでした。
 これでは、貴委員会の調査審議は単に、県が意図する「事業継続」の対応方針にお墨
付きを与えるためのものに堕してしまう危険が多大であります。そればかりではなく、貴委
員会の今回の調査審議はそのまま、土地収用のために利用される印象極めて強いもの
があります。このままでは貴委員会は、県民世論は二分し県民合意が成立しているという
には程遠いこの空港建設について、みずからの意図はどうあれ、公正中立どころか県当
局に一方的に加担するものとならざるを得ないと考えます。
 私たちは、このまま推移することによって貴委員会が県当局の「御用審議会」「隠れ蓑
委員会」におわることを、各委員の御名誉のために惜しむものであります。

2.「数回の審議で足りる」とすることについて

 私たちはとりわけ、知事と県当局が空港建設を他の59件の事業と並べて取り扱うこと、
空港に閑する審議を6月半ばには終了させる意図であることと、委員長が空港に係る審
議を4〜5回で足りると見込んでいることに、驚かざるを得ません。知事はこの空港建設
について県民が抱く多くの疑問と深い懸念を、また委員長はこの空港建設に係る広汎な
諸問題の深刻さ・重大性を、一体どう認識しているのでしょうか。
 事業評価監視に関する国土交通省の実施要領では、県は必要に応じて複数の評価監
視委員会を設置することができる(資料2)のに、県は委員の方々にこのことをお知らせし
ていないようです。私たちは、この空港事業に対する全国世論まで含めた社会的関心の
高さ、事業規模の大きさ、計画が抱える問題の複雑性、用地取得を始め事業行き詰まり
の深刻さ、用地の強制取得が及ぼす社会的影響の重大性等から見て、貴委員会は空港
事業については別個の委員会の設置を求められることが当然と考えます。
 また、国、県いずれの要領・要綱によっても、「事業採択後10年目の年度末までに実施
する」ことが定められていて(資料2、貴委員会第1回会議に対する県提出資料3の13ペ
ージ参照)、決して拙速は求められていません。静岡空港に係る再評価は来年3月末まで
に終わればいいのです。
 県は来年度予算の概算要求(8月末締切)に間に合わせることを望んでいますが、報道
によれば一方で国土交通事務次官は知事に対し、わざわざ「丁寧な再評価」を要請してい
ます(資料8)。概算要求時に当県がまだ再評価を終わっていなくても、来年度補助金予
算については国は独自の判断で取り扱えばいいはずであります。
 空港事業を他の諸事業とパラレルに取り扱う上に、たった数回の審議でお茶を濁すよう
な無責任な委員会運営は、私たちの到底容認できないところです。

3.県の資料・説明について

     

 私たちが第1回会議を傍聴して直ちに知ったことは、県当局の提出資料や説明には歪
曲、誤認、遺漏等が多く、全体として、事実を伝えない不正確なものになっていることであ
ります。
例えば、
@土工量ベースの進捗率を説明しているが、現在までの切土・盛土工事は比較的近距
離の土砂運搬で済んでいたのに対して今後の運搬距離は次第に長くなるにもかかわら
ず、それを考慮に入れた正確な進捗率になっていないこと。

A国の補助金は本体部工事費500億円の2分の1であるのに、工事費全額が補助され
るように錯覚される説明を行い、傍聴席からの指摘で訂正していること。

B用地買収に応じない個人及び共有の地権者たちに対して何百回もの交渉を行ったよう
に説明しているが、地権者たちは基本的にこの空港計画と県の強引な推進に対する強い
不信を抱いているため、ほとんど交渉に応じることなく、県側は大半は直ぐさま電話を切ら
れるとか訪問しても玄関払いに遭ったりとかで、「交渉」の名に値する事実は皆無に近い
こと。

C物流に関する説明で、「貨物空港」化には3000メートル級の滑走路が必要になること、
それには工事費の巨額の膨張を覚悟しなければならないことや、騒音被害の拡大等を招
いて地元地域との約束に違反するため地元の一層大きい反発を呼ぶことなどを無視して
いること。

D各アクセス道路とも用地買収は難航していることのほか、主要なアクセス道路の一つは
最近、JR東海から新幹線トンネル上の用地提供の拒否にあって計画の大幅な修正を余
儀なくされていることが隠されていること。

E榛原町赤坂地区のビオトープの資料及び説明で、カジカガエルの移転が失敗しているこ
と等が隠されていること。

F土地収用に係る事業認定に関する実体的要件(起業者の意思・能力、土地の適正な利
用への寄与、公益上の必要 「土地収用法20条)の充足の必要を説明することなく、また、
報道によれば国交事務次官は「事業認定申請には(丁寧な)再評価の結果を見て対応す
る」としている事実を紹介しないで、あたかも、事業認定を申請すれば必ず認定されるか
のような前提で収用問題を取り扱っていること。

G障害切土部分の航空法の規定による「物件」除去は、所有者による民事訴訟の提起等
の支障が発生して短期間には実施が不可能であること。
等々であります。

 もっとも、これらの説明の不足、不正確等の多くは、委員の方々に静岡空港問題の経緯
と現状に関する十分な知識と情報があれば、会議の席においても直ちに指摘が可能なも
のであります。委員からそのような指摘や質問もなく審議が進行することに、私たちは、こ
れでは大変誤った結論に至るという、重大な危惧を抱かざるを得ません。
 これに関連して申し上げますと、第1回会議で委員の質問にも出た「空港専門家委員会」
について、私たちはその設置と調査審議の欺まん性、「公正申立」の名に背く偏向性等を
衝いて住民訴訟を提起しています。貴委員会にも他山の石として頂きたく、資料において
原告側の実証的な指摘を披露しておきます(資料4)。

4.事業進捗の見込みにおける用地問題の取扱について

 

(1)この空港に関する今後の事業進捗の見込みについて、国交省も方針を明らかにして
 いない(前述のように、国交事務次官も態度の未定を述べている)状況のもとにおいて、
 特に、次のような諸事情を無視して強制力による用地取得を前提とした判断を行うこと
 は極めて不合理であり、まったく不当であります。
 ア.航空法においては、空港設置に関する許可要件の一つとして、用地が確実に取得
 できると認められることを規定しています(法39条1項5号)。
 この認定が困難であったため、運輸省(当時)と静岡県知事との間で、知事が「地権者
 を説得し県の責任において全用地を取得する」旨の『確約書』(資料5)を提出すること
 で折り合いがつけられました。これについて当時の報道は、次のように述べています
 (資料6)。
 「無論、県が『責任をもって説得』との確約の中には『用地の強制収用はしない』、との意
 味が含まれる(航空局首脳)」
 このような経緯からして、この空港の用地取得に強制力を用いようとすることは国に対
 する静岡県の明らかな違約であります。また、もし国がこのような違約を容認するよう
 なことがあれば、中央官庁と自治体との安易な慣れ合いの批判を免れません。
 イ.先にも触れましたが、この空港の用地取得に強制力を用いるための事業認定には
 公聴会、第三者機関による審査等を経た上で、実体的な三つの認定要件を充たさなけ
 ればなりません。
 もし事業認定の申請が行われた場合は、私たちは直ちに訴訟提起、全国世論への訴
 えその他あらゆる手段によって対抗しますから、事業認定が行われるかどうかは現段
 階ではまったく不確定です。さらに、もし事業認定が行われても、収用裁定手続きは独
 立的な行政委員会たる静岡県土地収用委員会の所管するところです。
  このように、県が土地収用によって用地問題を乗り越えるには、未知数的要素に満ち
 た過程が控えています。

 ウ.万一、国交省が静岡空港について事業認定を行うことによって、最終的には物理的
 な強制力の行使にまで至る力ずくの手続きを容認する場合は、当然の話として、同一の
 官庁が所管する新東京国際空港(成田)の用地問題にも深刻に波及することを覚悟す
 べきです(資料7参照)。
 反空港の運動は全国的に連帯しています。成田において「用地取得に強制力は用いな
 い」とした国の約束の趣旨は、静岡についても貫かれるべきです。
(2)県は、障害切土部分約82ヘクタールについては、地権者の同意がなくても航空法の
 規定(49条)により切士が可能としていますが、これに係る国交大臣に対する裁定申請
 にも、私たちは民事訴訟を含む法廷闘争その他をもって全力を挙げ対抗しますから、容
 易に代執行を行うことはできません。
  許可事業として工事完成期日が定められている(航空法41条)この空港建設に、土地
 収用と同じく多大の不確定要素を含む航空法による障害除去を前提とした事業進捗の
 見込みを判断することは著しい不合理です。
(3)これらの諸事情を考慮すれば、今後の事業進捗の見込みに関する貴委員会の判断
 は、本体部及び障害切土部分における用地取得については当然、任意買収のみを前
 提にして行われるべきであります。事業進捗について、不合理にも客観的条件を無視し
 て強制的手段行使の蓋然性を前提にした判断を行うことは、明らかに、事業継続を望
 む県に無批判に加担するものであり、貴委員会の公正を根底から凝わせるものにほか
 なりません。

5.工事の進捗率及び事業費膨張の可能性について

    

(1)県は土工量べースによる進捗率を58.1%としていますが、これには重大な疑問が
 あります。
  そもそも、この空港の用地造成のような切土・盛土工事における土工量は、切土する
 土砂の体積(=盛土体積)とその運搬距離の積によって定まるものです(資料8)。
  これによって考えますと、まず、東南東から西北西の方向に延びるこの空港用地につ
 いては、
 @ 本体部と障害切土部分を合わせた自然の地形の標高が、概ね東南東側(吉田町
  側)から西北西側(金谷町側)に向かって高くなっている。
 A さらに、東南東側には大きい谷状地形がいくつもあるのに対して、西北西側には大
  きい谷はなく、逆に全体的に丘陵状をなしている。
 B このため、空港用地として平坦化しなければならない区域において、土砂は総体と
  して東南東側において大量に不足し、西北西側において大量に余ることとなる。
 C したがって、平坦化すべき区域のほぼ中心部で開始され進められてきた切土・盛土
  工事は、工事が進むに従い今後、西北西側から東南東側への大量の土砂の運搬距
  離が長くならざるを得ない。
  という実体があります。
  これを前提として現状を見ると、進捗率58.1%と称する土砂の多くは、本来の地形
 の高い部分からその近くの低地に運搬したものに過ぎず、また、地形の表面を多少削
 ったものの滑走路平面(標点において標高135メートル)より相当高いまま残されてい
 る部分も少なくありません。
  現状で、本体部及び障害切土部分を合わせた区域約270ヘクタールにおいて、滑走
 路または障害除去が必要な平面に平坦化された部分の面積はせいぜい30%といった
 ところです。今後、造成工事が進むに従って、同じ単位土砂量であっても運搬距離は長
 くなる一方ですから、それを考慮した場合、移動土砂の総量2600万立方メートルと運
 搬距離の積による土工量によって見れば、土工量ベースによる実質的な進捗率は20
 %以下と考えられます。
  県は事業費ベースによる進捗率を64.3%としていますが、上記(1)のように土工量
 ベースによる実質的進捗率は58.1%より相当下回るとした場合、事業費総額の膨張
 は避けられないことになります。
  私たちは早くから、巨大な切土・盛土によつて用地を造成することにおいて静岡空港と
 類似する広島空港や岡山空港との比較によっても、県公称の静岡空港の総事業費19
 00億円の大幅な膨張は避けられないことを指摘してきました。このことは、県が以前、
 空港専門家委員全に提出した資料によっても裏付けられます(資料8)。
  今、事業再評価の機会に、事業費の厳密な見直しを求めることも、貴委員会の重要な
 使命であると考えます。

6.事業の評価基準について

 設置要綱によれば、貴委員会の任務は県が作成した「対応方針(案)」について意見を
述べるにとどまっています。しかし、私たちは、公共事業について徹底した事業評価を行
うためには、独立した第三者機関がみずから諸データを精査し必要な追加調査等を行っ
て、それに基づき公正な結論を示すべきだと考えます。
 貴委員会の性格、調査審議は短期間で足りるような委員長発言、事務を担当する県当
局の姿勢等を見ると、このままでは、貴委員会に厳正な調査審議と県民の立場に立った
公正なチェック意見を期待するのほ困難に思われます。
 しかし、貴委員会の努力次第では、あるべき公正な事業評価に近づく余地はあると考え
ます。例えば、国交省は2月、地方空港の滑走路新設等に関する評価基準を定めました
が(資料9)、これは新親事業に適用されるものであるとしても、事業採択後10年が経過
して完成までになお多くの課題を残すような事業については、事業評価にあたって準用さ
れることが適当ではないでしょうか。
 その評価基準は15項目にわたるもののようですが、その1項目は「最大路線で利用者
50万人以上」とされています。現在、各地の地方空港との間でこれを充たすのは羽田と
伊丹の両空港だけです。ところが、県が行った空港需要等検討委員会の報告では、静岡
〜札幌間の路線がこれを充たすようになっています。荒唐無稽といわざるを得ません。

 第1回会議では説明されませんでしたので需要予測に関する私たちの意見は後日追加
することにしますが、貴委員会は、上記の国交省の評価基準を参考にして、需要予測に
限らず、具体的な厳しい独自の評価基準を作成して検証の作業に当たられるべきだと考
えます。そのような自主的な努力がない限り、貴委員会は事業「継続」の県の対応方針案
を、ただ追認するだけで満足していたといわれても仕方がないといえましょう。

7.世論の動向について

  

 御承知のこととは存じますが、一昨年、知事選挙に際してマスコミ各社(NHK、毎日、読
売、中日)が行った静岡空港に閑する世論調査でほ、いずれも、ほぼ2対1の比率で「不
必要・反対」が「必要・賛成」を上回りました。つまり、県民3人のうち2人までが建設の中
止を望んでいるということです。この一事を見るだけでも、この空港建設は無駄な公共事
業の典型であると断言できます。このような事業に果たして「公益上の必要がある」(土地
収用法20条4号)ということができるでしょうか。

 また、マスコミの各種論調を見ても、この空港建設については地元の一紙を除いてはほ
とんど批判的なものばかりで、静岡空港はまさに四面楚歌の観があります。いわば国民
的な世論ともいうべき批判に抗してこの空港建設を強引に継続することに、どれだけの合
理性や正当性があるのでしょうか。

 このような世論の動向を反映して、空港建設の是非を住民投票に問う直接請求は法定
成立要件の6.5倍にも達する多数の署名を集めて成立しました(01年)。そして、その直
後、知事はこの支持の乏しい空港建設について、「住民投票に賛成。空港建設は住民投
票に従う」と公約し、「それが民主主義の大原則」とまで強調しました。県議会による住民
投票条例案の否決があったにせよ、知事が「公言したが公約ではない」などと語った姿
勢に象徴される顛末は、今もマスコミに「あと味が悪い」と書かれる通りです。
 さらに、世論の形成や動向について、これらと並ぶ重大な問題があります。それは、県
当局や空港堆進で県と密接な関係がある推進派が、卑劣にも、マスコミ、自治体や民間
研究機関が呼びかけた建設の是非を問う公開討論の場に、一度も参加しようとしなかっ
たことです。すなわち、県と推進派は、例えば00年9月、朝日新聞が企画したインターネ
ット討論、同年11月、静岡地方自治研究所が呼びかけたシンポジウム、01年、静岡朝
日テレビ局が企画した県下選出の各政党国会議員によるテレビ討論、同年2月、下田市
議会が申し入れた討論会などをことごとく拒否し、醜くも、県民の前で公正に議論をたた
かわすことから逃げ回ってきました。

 その一方で知事は、「住民投票に代わる手段、方法」と称して設置した空港専門家委員
会の到底「公正・中立」とはいえない報告をもって、何の根拠もなく 「県民の凝問に対し
て理解が得られた」と判断しています。こうした独善極まる知事と県の姿勢に対して、県
民の中には、言葉にする機会は少なくても激しい非難、批判、反発の空気が渦巻いてい
ます。
 貴委員会におかれては、どうか、公共事業一般について厳しい見直しを求める中で、静
岡空港に対して疑問を呈し批判する国民・県民の世論を軽視することなく、慎重な上にも
厳正な態度をもって事業評価を監視して頂かなければなりません。仮にも貴委員会が世
論を無視する安易な姿勢に流れることのないように、県民は貴委員会を厳しく「監視」し
ていることをお忘れにならないで下さい。

8.円卓会義開催について

   

(1)第1回会議で委員と委員長から、反対運動の反対理由について質問がありました。
 県当局が答弁しましたが、これは私たちにお尋ねになるべき問題であると考えます。
  私たち「空港はいらない静岡県民の会」に結集している反対8団体の反対理由は、基
 本的にはこの空港建設計画の反民主性及び不合理性にあります。それは、問題の項目
 としては、
 @計画の策定及び推進における非民主性
 A「用地取得の確実性」がないことを無視した設置許可申請及びその取得
 B激甚な環境破壊をもたらす建設計画
 C財政能力を無視した不合理かつ非効率的な事業計画
 D全般的に粗雑で無責任な事業計画
 に要約することができます(資料10)。

  これらの延長線上に、悪逆非道な土地収用・強制力行使の方針に対する一層激しい
 怒りがあります。これについては多言を要しません。当会を始めとする空港反対諸団体
 の抗議の共同声明(資料11)を御覧下さい。
  御質問にあった「反対している人たち」とは個人の反対地権者たちを指すものと思わ
 れますが、反対運動に参加している人々全体が反対地権者と連帯しているものであり、
 反対地権者たちの反対理由は上記と異なるものではありません。ただ、生活権まで脅
 かされるこれらの人たちが反対を決意するについては、地元地域で空路直下にあたり
 騒音等の甚だしい被害を蒙る吉田町民と同じく、予定地をまったく住民参加を欠いたま
 ま一方的・権力的に決定し押し付けられたという、「成田」と同様な権力の仕打ちに対す
 る怒りが直接的な動機でした。これを私たち反対運動は、行政権力の思いあがりによる、
 「成田」と異ならぬ基本的な「ボタンの掛け違い」と認識しています(資料11、資料12)。

  騒音等の被害について見ても、県は空港のような「迷惑施設」の建設について「ボタン
 の掛け違い」が何を意味するかを、その後もまったく理解してきませんでした。
(2)この「ボタンの掛け違い」については、次の三つの事実も指摘しておかなければなりま
 せん。
  一つは、かつて地元地域の空港反対団体「空港ノー」吉田町民の会は県に対して、空
 港予定地は一旦白紙に返し、円卓会議を設けて検討し直すことを提案しましたが(95年)、
 県はこれをニベもなく拒絶したことであります。私たちは、これによっ て「ボタンの掛け違
 い」は決定的になったと考えています。
  二つには、「成田」における円卓会議の設置が決まる直前、運輸省(当時)航空局が公
 表した文書においても、空港建設について「立地選定段階からの住民参加」の必要が明
 示されていることであります。静岡県は、私たちがこれを指摘しても何らの反省も示しま
 せんでした。
  三つには、最近、知事が反対地権者に届けた書簡にも、「昨今の公共事業を巡る見直
 し論議を踏まえ、…住民の事業決定手続きへの参加の重要性については、十分認識し、
 このことを確立していくことが肝要」と述べていることであります。「事業決定手続き」の最
 も重要な部分は、予定地の決定に関する手続きであります。この表明が真意に出たもの
 であるならば、「立地選定段階からの住民参加」をまったく欠いた事業の推進過程を、知
 事は反省するばかりでなく根本的に修正すべきであります。

(3)静岡空港に関する厳密で公正な評価と監視が、委員長のいわれるように貴委員会の
 数回の審議で可能になるとは、私たちにはとても考えられません。
  例えば、長野県はダム建設について、特別に設置した委員会で、約1年をかけて調査
 審議したと聞いています。また、兵庫県は播磨空港(県営)について昨年、懇談会を設け
 て調査審議し、その報告に基づいて同計画を中止しましたが、この調査審議では、委員
 に反対運動の代表や公募した委員を加えているほか、予定地周辺自治体の住民に計画
 推進か中止かを問うアンケート調査を実施しています(静岡と播磨では事業の進捗段階
 が異なるとしても、事業継続の妥当性を調査・検証する必要については基本的には異な
 るところはないはずです)。
  これらとの比較から見ても、貴委員会の構成や運営には多大の疑問があります。私た
 ちは、このままでは貴委員会は、県が静岡空港について、空港将来構想検討有識者懇
 談会、空港専門家委員会、空港戦略プロジェクト会議などと、あたかも「厚化粧」させる
 にも似た「御用機関」的な会議を繰り返してきたのと、五十歩百歩の役割しか果たせない
 のではないかと予想しなければなりません。
  また、県が実施中の、空港に関する県民の意見募集の要領・説明を見ても、「平成15
 年度公共事業再評価調書」(第1回会議配付資料5)において「評価」欄は「継続」「中止」
 等に分かれていて、評価の県原案は「継続が妥当」「縦続」と明記されているにもかかわ
 らず、募集意見の用紙にはそのような選択肢について記載する欄がありません。これで
 は応募する県民は、今さら 「事業中止」を主張する余地はないように誤解しかねません。
  県の意図するところは最初から明白です。貴委員会がその意図にそっくり乗せられる
 ような結果になれば、貴委員会の任務は単に「県にお墨付き」を与える」ことに過ぎなか
 ったと判断されても仕方がないことになりましょう。

(4)縷々述べてまいりましたが、最後に御要請申し上げます。
  静岡空港事業に関する事業再評価の精度を高め、公正で適切な結論を得るため、委
 員の方々に、貴委員会を中心に県当局及び反対運動の代表の3者からなる円卓会議の
 開催に御努力頂けないでしょうか。
 理由は次の五つです。
 @ 静岡空港の建設は県民合意が成立しているというには程遠い状況にあって、貴委員
 会の調査審議には十分な慎重さが必要と考えられること。
 A 貴委員会がこの空港事業の継続または中止について適正な意見を述べるためには、
 事業の内容及び推進の経緯に詳しい反対運動側からも、説明を受け意見を聴取するこ
 とが適当と考えられること。
 B 空港用地の取得に強制力を用いるようなことは、今後における当県及び県下自治体
 の公共事業の推進に著しい悪影響をもたらすと考えられること。
 C 県民世論の動向を見ても大勢は土地収用を望んでいないと判断されるが(資料13
 参照)、貴委員会にも、これを考慮した運営を行って項きたいこと。
 D 反対運動側から円卓会議のようなものを県に提案しても、県の従来の姿勢からは受
 け入れるところとなりにくいが、貴委員会の公正な調査審議に寄与するものとしして委員
 会側から提案することによって実現する可能性があると考えられること。

 申すまでもなく、私たちは貴委員会の調査審議を混乱させたり妨害したりする意図は毛
頭持ち合わせません。私たちの願うところを御賢察下さいまして御尽力頂くことができます
ように、要請いたします。