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静岡空港用地取得の実態について

                                      空港反対訴訟原告団・弁護団
                                      空港はいらない静岡県民の会

 県は空港用地の取得について、近く本体部では97%、「周辺部を含む用地全体」では
88%に達するように発表しているが、これには重大な凝問がある。
 今回、われわれが調査した結果によれば、県の用地取得率は本体部約190ヘクター
ルでは90%程度、買収対象たる空港事業区域533.7ヘクタール全体(いわゆる「周辺
部を含む用地全体」)ではせいぜい80%程度にとどまる。
 県が発表している用地取得率の数字は明らかに誇大である。県は、空港はいかにもで
きるかのように県民を錯覚させ誘導する悪質な意図をもって世論操作を行っていることは
疑いない。
 以下、調査の経緯と結果及びそれが意味するところについて説明する。

1.国土交通大臣(旧運輸大臣)を被告として空港設置許可処分の取り消しを求める抗告
 訴訟の原告らは、控訴審において裁判所に対し、県が空港用地のうち指摘した範囲の
 土地につき買収に応じた地権者の数、取得面積及び取得地・未取得地を図面上に示す
 ことを求める調査嘱託を行ったところ、県は、地権者数及び取得面積(2001年9月末日
 現在)は提示したものの、「未取得地が明らかになることによって買収に応じない地権者
 の利益が損なわれ、また、今後の用地取得交渉に支障を生ずるおそれがある」旨の理
 由をもって図面の提示を拒否する回答を行った。
  これを不当とする控訴人(原告)らは、調査嘱託において申し出た土地の指摘範囲が不
 足していた事情もあって、被控訴人・国土交通大臣に対し、申し出が不足していた範囲
 (空港事業区域の一部)における取得状況について同様の資料の提示を求める当事者
 照会を行ったところ、国交省は「国交省も静岡県もそのような状況を把握している必要は
 ないし把握もしていない」として回答を拒否した。

2.県及び国交省の回答拒否は極めて不当である。
  県は、買収に応じない地権者は本体部で3世帯、周辺部で1世帯と発表しているが、そ
 れら各世帯の代表者はいずれも控訴人としてみずから調査嘱託を申し立てた者であり、
 買収に応じない地権者として氏名等が明らかになっても今さら利益が損なわれることは
 ない。
  また、国交省は、空港設置許可権者であり空港整備事業の監督官庁でもあって、設置
 許可を受けた者が正当な理由なく期日までに工事を完了しないときは許可を取り消すこ
 とができる権限まで有しており(航空法48条1号)、空港用地の取得状況は常時的確に
 把握しているべきであるし、把握していないとはとても考えられない。県においてはなおさ
 らである。
  県、国交省とも、回答拒否についてはまったく理由がない。両者とも、この空港建設につ
 いて用地取得の実態が明らかになることにより不利な立場に追い込まれるからこそ、共
 謀して、図面を用いた回答をともに拒否したものと推察される。

3.われわれはこのように不当な回答拒否に対し、県の部分的な回答を手ががりとする合
 理的な方法により、本体部及び空港事業区域(本体部を含む買収対象区域全体)の取得
 率を算出した【注】。
  その結果、本体部の取得率は90%程度、空港事業区域(=買収対象区域)全体ではせ
 いぜい80%程度と推定される.これらは、言うまでもなく県が発表している数字を大幅に
 下回る。


  かつて大日本帝国は、大本営発表をもって著しく誇大または架空の戦果を宣伝する一方
 で味方の被害や損失を秘匿し、国民を欺いた。今や県は「大本営発表」さながらに、空港
 用地の取得について過大な架空の数字と「少数の反対地権者」を宣伝し、いかにも「空港
 はできる」と県民を錯覚させ「反対地権者らは一握りの悪者」と印象づける世論操作を行っ
 ているとしか考えられない。もし県や国交省が、われわれがここに発表した実態に反駁し
 たいのであれば、すべからく図面をもって取得地・未取得地のすべてを県民の前に提示す
 べきである。
  県が調査嘱託に対する回答において 「今後の用地買収事務に支障を生ずる」と述べて
 いることは、本体部と周辺部を合わせた買収対象地には実際は「4世帯」のほかにも買収
 に応じない地権者たちが存在し、調査嘱託や当事者照会に正確に回答することにより実
 際の低い取得率や多くの未取得地が表面化した場合、今後、これらの地権者たちまで、
 「空港完成の見込みはない」と考えて用地提供につき態度を一層硬化させるだろうという
 恐れを意味するものと考えられる。

4.この空港は、仮に本体部が完成しても「障害切土部分」80ヘクタールの切土が完了し
 ない限り杭空機は一切離着陸できない.本体部だけでなく「障害切土部分」を加えた地形
 改変区域は270ヘクタールにも及ぷが、われわれが別途把握しているところでは、事実、
 この地形改変区域内には県の言う反対地権者以外でまだ用地買収に応じていない地権
 者たちの所有地が点在する。
  上記の空港事業区域の取得率約80%は、この事実も裏付けている。

5.われわれは抗告訴訟の原審以来、個人及び共有の多数の地権者が絶対に用地提供
 に応じない強固で明確な意思を有する以上、設置許可にあたり知事が提出した「県の責
 任において全用地を取得する」とする『確約書』は何の意味も持たない空手形に過ぎない
 と主張してきた。ここに示す用地取得率の実態は、あらためて、県と国交省(旧運輸省)と
 の慣れ合いによる知事『確約書』の虚妄性を暴露するものである。
  一方では、昨年の空港住民投票直接請求の成立や、知事選挙に際してマスコミ各社が
 行った県民世論調査の結果等を見ても、この空港建設に対する県民の支持の乏しさは
 歴然たるものがあり、このように民意から完全に遊離した事業が、土地収用のための事
 業認定の要件「公益上の必要がある」等を備えているとは到底考えられない。
  国交省は、用地取得難航の現実とその理由を直視し、速やかこの空港建設に対する一
 切の支援を打ち切るべきである。

【注】 用地取得率の算定方法
(1)
 まず、抗告訴訟原審判決の制限表面投影面等を示す添付図(判決第二図)に、空港基本
計画における滑走路・誘導路・着陸帯、本体部及び空港事業区域を示す図面を重ね合わ
せた上、空港事業区域を調査嘱託で申し出た範囲と申し出が不足していた範囲に2分した
図面を作成し、これをメッシュ化して両範囲それぞれの面積を算出した。
 メッシュ図こおいて、調査嘱託を申し出た範囲Aに属する方眼の数は125.5、申し出なか
った範囲Bに属する方眼の数は30.5であるので(空港事業区域内の方眼は各1、一つの
方眼が区域の内外にまたがるものは各0.5と数えた)、空港事業区域の面漬533.7ヘク
タールをこの比率で接分して、Aの面積を429.4ヘクタール、Bの面積を104.3ヘクタール
とした。
(2)
 次いで、
ア.滑走路・誘導賂・着陸帯については、原判決が判示した面積と調査嘱託の県回答にお
 ける取得面積により取得率92.2%を算出した。
イ.空港事業区域のうち、調査嘱託で申し出た範囲については、上記(1)の算出面積と県
 回答における取得面積により取得率77.9%を算出し、調査嘱託で申し出ていなかった
 範囲及び空港事業区域全体については、この比率をやや上回る80%程度とした。
(3)
 本体部については、中でも基幹的部分である区域(滑走路・誘導路・着陸帯び)の取得率
 92.2%(2)のアに(2)のイを勘案して90%程度とした。