
| 空港専門家委員会に係る住民訴訟 選定当事者陳述書 |
●2002年4月26日
| 陳 述 書 原告選定当事者 吉 本 健 一 同 芳 賀 直 哉 同 高 島 清 同 島 野 房 巳 同 清 水 金 幸 1.静岡空港は、巷間「なくても不便じやない。あっても便利じやない」と言われている通り、「無用 の長物」であります。首都圏及び準首都圏に属する1都8県の中で、県営地方空港の新規建設 などという愚劣なことを考えたのは当県だけであります。隣接する中京圏の3県について見ても 1県もありません。 静岡空港はまた、県財政の破綻を一層激化させ、県民の生活を破壊します。当県は全国47 都道府県中、福祉、教育、医療等生活関連予算が最低の水準にあります。そうした状祝のもと で、陸上に建設した他の地方空港に類を見ない莫大な資金を投じて費用対便益効果も低劣な 地方空港の建設に狂奔する姿は、まさに稀代の悪政を見る思いがします。 こうした事情を反映して、空港住民投票の直接請求は法定成立要件たる有権者の5%(約6 万名)の4.5倍にも達する多数の署名を集めて成立しました。住民投票は建設「反対」の趣旨で はなく「是非」を問うものであるとしても、これほど多数の県民が住民投票の実施に賛成した背景 に、この空港建設に県民合意は全く成立していないという事実があることは疑いありません。 2.このような実情にあるこの空港事業について、被告は一旦、住民投票の実施に賛成して、建設 は民主主義政治体制の大原則に基づき住民投票の結果に従うと、大見得を切り明言しました。 ところが被告は、県議会が投票条例案を否決するや否や、住民投票の実現に向かっての努力 は一切放てきしました。そして被告答弁書によれば、住民投票は否定されても本件空港の「必要 性」にまで遡った論議という課題はなお残るので、その課題を解決するための一方法として、自 称「公正・中立の第三者機関」たる空港専門家委員会を設置し、その後、「専門性」を備えた同委 員会の「精査・検証」によって「県民の理解が得られた」と称して空港工事を再開しました。 しかし、被告が進めたこの筋書きには重大な疑問や見過ごすことのできない矛盾が為ります。 まず第1に、「公正・中立の第三者機関」と呼べるためには、言うまでもなく、委員らはどこから見 ても独立的で不偏の立場を堅持した人物でなければなりません。しかるに委員会の構成員には、 委員長に代表されるように、県のいわゆる「息のかかった」人物が少なからず含まれる反面、本件 空港に批判的な意見を持つような人物は排除されています。 第2に、「必要性にまで遡った課題を解決」するためには当然、必要・不要の両論が公平に反映 される機関の場で十分に調査され論議されるべきであります。しかるに、委員会の目的及び審議 内容は最初から、事業の推進、すなわち「必要性」が有ることを前提とする矛盾を犯しています。 第3に、本件空港建設に係る「重要事項について専門的に精査・検証」するためには委員らは単 に何らかの分野を専門とするのみでは明らかに資格が不足であり、当然、本件空港問題あるいは 少なくとも地方空港一般の整備問題について、精通している必要があります。しかるに委員らには、 一部を除いてはほとんどそのような予備知識もなく、その「専門性」は見せかけのものに過ぎませ ん。事実、委員会の審議内容は、静岡空港問題に関する検討としては、いわゆる「素人談議」の域 を多く出るものとなっていません。 第4に、公正・中立の立場から精査し検証するためには、全ての検討事項について、主要な問題 点が客観的にして的確に提示され、適切に説明されなければなりません。しかるに、被告の意を受 けた県職員は委員会に対し、各事項について県の見解を陳弁するのみで整理された問題点の提 示すら行わず、また委員らも一向に、問題点の正確な提示とそれに関する詳細な説明を求めてい ません。敢えて委員らの「(非)専門性」には目をつぶるとしても、整理された問題点の提示がなけ れば調査審義が通り一遍の上滑りのものになるのも当然であります。 第5に、委員会の調査審議は極めて短期間で、仮に委員らが専門的聴力を備えている場合でも、 この面からも皮相的で形式的な審議しか期待できませんでした。詳細は求釈明に対する被告の回 答を待って論述しますが、「そそくさ」と形容するにふさわしい委員会の 「精査・検証」は、およそ客 観的で実証的と言うには程遠いものに思われます。 第6に、被告は委員会の調査審議によって本件空港に係る問題点はクリアされ、県民の理解が 得られたとしていますが、上述のような偏向的な機関の粗雑な審議によっては、数々の問題点と 県民の懸念や凝間は依然として放置されたままであり、これによって県民の理解が得られたとす る被告の認識は、全くの独断的な思い込みで何の根拠もありません。 3.このようにして、空港専門家委員会なるものは公正・中立性も専門性も欠いたマヤカシに過ぎず、 被告が称するように、住民投票が実施されなかったことを補う一片の効果も生じ得ないものであ ることは今や明白であります。そして、それは、些かでも論理的・合理的な判断力を持つ県民にと っては、当初から分かり切ったことでした。 一言にして尽くせば、。空港専門化委員会は 「公正・中立の専門的な第三者機関」などとはか け離れるも甚だしい、一個の「御用機関」に過ぎません。そして委員会は、浅薄で空疎な御都合 主義的審議をもって被告にいわゆる「お墨付き」を与え、被告は委員会の報告をテコにして、全く 独断的・一方的に「県民の理解が得られた」と称して、無謀にも強引に、用地の取得状況から見 でも到底完成する展望のない空港工事を再開しました。 被告が真に本件空港建設、の是非を住民投票に問う意思を有していたのであれば、住民投票 の必要性を直接県民に訴え、その理解と支持のもとに独自に投票条例案を提出すべきでありま す。これに反して被告が、県議会による住民投票条例案の否決以後、それを奇貸とするがごとく、 あるいは、むしろそれを期待していたがごとく、住民投票につき一切の努力を放てきして平然とし ていることは、県民に対する公約違反と呼ばれても仕方がないものであります。被告は、公約違 反に引き続き、もっともらしく公正・中立と専門性を偽装した委員会をもって、県民を二重の詐術 にかけたに等しいのであります。 4.被告みずからが認めた本件空港の「必要性にまで遡った懸案の解決」は、マスコミも「必要性に なお疑問」と書く通り、依然として常に浮いたままであります。それにもかかわらず被告が、御用 機関の審義をもってあたかも住民投票に代置し得たがごとく振舞うことは、県民を軽侮し愚弄す るものにほかなりません。 被告の二重の詐術と県民を愚弄する感度の上に立って、専門家委員会に係るこの不正な支出 があります。原告らは、委員会の偽まん性と虚構性を白日のもとに曝すことによって、この不正 な税金の無駄遣いを取り戻すとともに、「住民投票なく県民合意なき空港建設」の強行を阻止した いと願うものであります。 |