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今夜の番組チェック




2000年9月29日 原告・島野房巳

 本件空港建設事業は、まったく県民が支持するに値しない、著しく県民及び地
元地域住民の利益に背くものであります。
 それは、第一に、高速交通網に恵まれ首都圏及び中京圏にも隣接していて、
首都圏又は準首都圏に属する他の各県と同じく、本来効率性の低い地方空港
を必要としない当県に、敢えて巨額の血税を費して無用なローカル空港を開設
しようとするものであります。被告が唱える必要論は皮相的且つ観念的なもの
に過ぎず、今日、既設の各地方空港がほとんど軒並み、航空自由化のもとで逢
着している困難極まる重大な局面をまったく無視するものであります。

 第二に、被告が皮算用する需要予測の根拠は現実性が稀薄で、コロコロ変わ
るその数字は信頼性を欠くとともに明らかに誇大であり、仮に本件空港が開港
してみても、膨大な建設投資に見合う多数の利用者は到底期待できません。
 バブル経済に浮かれた多くのいわゆるリゾート開発がそうであったように、
元来、基本的な需要がないところに、まず施設を造ることによって大きい需要を
生み出そうとすることは経済の基本原理に反するもので、容易に成功するもの
ではありません。被告が、JR東海が明確に拒否する新幹線「空港駅」を需要予
測に関連させて宣伝するに至っては、まったく論外であります。

 第三に、本件空港建設によって、地元住民が良好に維持してきた貴重な環境
が大規模且つ決定的に破壊されることは明らかであります。一旦破壊された微
妙な生態系が再生することは望み得ないところであるばかりか、特に、被告が公
的機関として全国でも例のないオオタカ営巣木伐採を強行したことは、全国民に
顔向けもできない最低の蛮行であります。

 第四に、本件空港の空域は航空自衛隊の両基地の管制圏・管制区に挟まれた
「狭隘かつ奇形的なものである上、自衛隊基地の初等練習機の飛行高度が本件
空港に進入する航空機と競合する等、空港の運営及び地域住民の生活に係る安
全性の確保について、多大な凝間と絶大な危惧が拭えません。
第五に、本件空港建設の総事業費は、立地条件が類似する既設の地方空港との
比較、租雑な事業計画等から見て、被告が称する一九〇〇億円に収まるとは考え
られず、将来、大幅に膨張する危険性は極めて大きいと言わなければなりません。
この無謀な投資が、既に破産状態にある県財政をさらに決定的な破局に陥れるこ
とは必至であります。

 第六に、周辺地憾住民に耐え難い被害の受忍を強いる本件空港の立地選定に
あたって、被告は、迷惑施設の建設について不可欠な地元地域の住民参加を無
視し、必要な直接民主主義をまったく顧みなかったばかりか、予定地を県議会に
も諮らず決定するという、間接民主制まで逸脱する横暴にして不正極まる方針を
とり、これについて、今日に至るまで何ら反省の色も見せていません。

 第七に、これら諸問題の当然の帰結として、被告による本件空港の取得用地
は多数の箇所と広い面積にわたって「虫食い状態」のままである上、この膠着状
況は今後とも解消する見込みはまったくありません。被告による全用地取得の可
能性は絶無であります。

 このようにして、被告の本件空港に関する計画の策定及びその推進は、権力
の思いあがりと官僚的独善に満ち充ちた非民主的で不合理なものであることは
明らかであり、本件空港建設事業は地方自治体に求められる「民主的で能率的
な行政」の基本原則に正面から背反するものであります。そればかけでなく、被
告はこの計画を、地権者の同意が揃わないことによる設置許可申請の再三の
引き延ばし、なお慎重を求める運輸省に対する申請受理の強要、用地取得の確
実性を無視した強引な許可の取得、工事の行き詰まりが明らかな見切り発車的
着工というように、無理の上にも無理を重ねてゴリ押ししてきました。

 これらはすべて、地方自治法が規定する「行政事務の誠実な管理・執行の責
務」に違反するものであり、これに伴うすべての公金支出もまた同様であります。
 もし、このような目に余る数々の不条理と欺瞞が許されるのであれば、地方自
治法第一三八粂の二の存在意義はまったく無いにひとしいと言わなければなり
ません。

 巷間、本件空港工事の状況を見て「ここまで進んでしまった以上、今さら中止
したらむしろ無駄になる」という言説をなす者があります。しかし実態は、たとえ
ば現在までに実施された本体工事は一割にも達せず、事業の続行を阻止して
これ以上の莫大な県民の損失を防ぐことは今からでも十分間に合います。
さらに工事を許すことによる無用で膨大・苛酷な県民負担の増大と取り返しの
つかない環境破壊の拡大を考えれば、心ある県民は今こそ本件空港計画の中
止撤廃を一層強く要求すべきだと考えます。裁判官は今から個人的にでも、工
事現場を含む空港予定地の現地を視察されることを強くお奨めします。

 今や、無駄な公共事業の全面的な見直しを厳しく求める国民的な機運が拡が
りつつあります。この時勢下、たとえば川辺川ダム訴訟において、農民等関係
住民が現時点において抱く事業に対する否定・反対の意思を考慮しない判決
が批判を浴びているように、裁判所は形式的な事実認定や法規の硬直的な解
釈適用に陥ることなく、時代の趨勢と国民世論の動向に即して、活きた社会の
健全な良識を尊重した英知と洞察ある賢明な判断を下されますように、切に期
待して弁論を終わります。